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2016年4月1日からETC2.0の一部高速道路での料金の割引が開始されました。
このETC2.0は、高速道路の料金収受だけでなく、渋滞回避や安全運転支援といった情報など、ドライバーに有益な情報を受け取ることができるというサービスです。一般的にはどちらかといえば不評なサービスですが、いっその事、私はこのETC2.0の搭載を義務化してもいいのではないかと思っています。
そもそも、ETC2.0は、全く新しく開始されたサービスではなく、これまであった「ITSスポット」(路車間通信用アンテナ設置箇所)や「DSRC」(Dedicated Short Range Communication)等の総称を「ETC2.0」に統一したものです。
このETC2.0のサービスは主に以下の5点です。
1.これまでよりも広範な渋滞情報の提供
2.危険個所情報の提供 3.災害情報の提供
4.高速道路SAでの観光情報等の提供
5.高速道路の利用料金の割引
このサービス内容を見ただけで評判が悪い原因が容易に想像できます。
まず、1つ目のサービスである「これまでよりも広範な渋滞情報の提供」ですが、今や道路の渋滞情報はグーグルによって携帯電話のGPSデータを活用したかなり精度の高い情報が無料で提供されていることを考えれば、今更不要なサービスです。
次に2つ目の「危険個所情報の提供」ですが、トヨタセーフティセンスを始め自動衝突回避機能が一般的になり、数年内には自動運転機能が市販車にも搭載されようとしている段階で、カーナビ画面に危険個所が予告されることに何の意味があるのでしょう。
そして3つ目の「災害情報の提供」ですが、クルマのカーナビは持っているけど携帯電話を持っていない人っているのでしょうか。災害時の携帯電話からの緊急速報は非常に早いことからカーナビで受信する必要は全くありません。
4つ目の「高速道路SAでの観光情報等の提供」についてもスマホがあれば全く不要です。
5つ目の「高速道路の利用料金の割引」に関しては、ETC2.0の普及を目的とした政策ですので、ETC2.0が持つ本来のサービスとは性質が異なるものです。
ここまで読んでいただければ、ETC2.0は全く要らない、お役所仕事による無駄な公共事業だという批判が出てくるのも納得です。
この流れでどうしてETC2.0の搭載を義務化するんだとなると思うのですが、それでも私はETC2.0の搭載を義務化した方がいいと思います。
先日毎日新聞の記事に、国土交通省がETC2.0を使って入手した自動車が急ブレーキを踏んだ場所の情報を自治体に提供したという話がありました。この記事によれば今後、こう言った事例は増えていくようです。
現在、これまで行政機関は位置情報を含む交通に関するビッグデータをほとんど持っておらず、こうしたデータは、ドコモやau、ソフトバンクなどの通信事業者や、グーグルやアップルなどIT事業者、トヨタやホンダなどの自動車メーカーが保有していました。だから位置情報を含んだビッグデータが欲しい場合、各事業者から購入することになりますが、このデータ、非常に高価なもので、簡単なデータでも数百万円かかることはざらにあります。それでも非常に有益な情報であるため、各自治体や大学などの研究機関、民間事業者は必要に応じて購入せざるを得ないという状況になっています。
しかし、このETC2.0が普及し、位置や速度情報も入った交通情報を国が収集できるようになれば、前述のように今まで入手できなかった高度な情報に基づいた道路整備計画や安全対策を取ることができます。さらにこの情報を、誰でも二次利用可能なようにオープンデータ化することができれば、これまで限られた事業者しか提供することができなかった渋滞情報のシステムを、より多くの事業者が開発可能になり、今まで以上のサービスをもった渋滞情報システムが開発される可能性があります。さらに言えば、誰もが想像していなかったようなサービスが提供される可能性も大いにあると思われます。
このように非常に大きな潜在力を秘めているETC2.0ですが、もし、先ほどの話のように情報収集するのが主な目的となった場合、よく心配されるのが、国による情報収集の危険性についてです。でも、そもそも国による位置情報の収集は危険なのでしょうか。
確かにその情報を国が悪用した場合、重大な人権侵害が起きる可能性はあります。ただ今の社会システムの中で、ルールを無視した運用がまかり通ることまずあり得ません。仮に、そのような事態が発覚すれば世論が黙っていません。そして恣意的な運用をするような人は選挙という手段で交代を図ればいいのです。
それよりも私が心配するのは、グーグルのように巨大な1企業がありとあらゆる個人情報を収集し蓄積している現在の状況です。企業の統治体制は、言うなれば昔の王様のようなもので、トップの意向により運用ルールは大きく変わります。このような統治体制である企業が少数で大部分の情報を握りこんでしまうことは非常に危険だと感じています。それよりは、国が情報を管理し、適切な形のデータにしたうえで誰もが活用できるように提供する方が安全ではないでしょうか。
とは言え、国による情報収集は非常にデリケートな問題です。だからこそ、国はETC2.0の普及を目指すにあたって、冒頭に示したようなサービスを提供する仕組みを取っているのだと思います。情報収集が目的ではなく、サービスを提供することが目的なんですよと言うことでみんなに理解をしてもらおうという作戦です。もちろんこれが上手くいけば何の問題もありません。みんながサービスを喜んで使い、反対に国はみんなから位置情報や速度情報など必要な情報を集めることができます。昨今、民間企業が行っている手法です。
でも残念ながら、冒頭でもお話しした通り、それだけ優れたサービスを提供できていないのが実態です。優れたサービスを提供できないのも当たり前の話で、本来サービスとはニーズを満たすために提供するのですが、ETC2,0の場合、情報収集という目的が決まっている中でそれを満たすことができるサービスを提供していくという、逆の順番から考えられたサービスだからです。質の低いサービスに対して、高いお金を出して利用する消費者はいませんから、この形での普及は望めそうにありません。ですから、国は真剣に普及を望むのであれば、いっその事、ETC2.0の目的をはっきりと情報収集に絞り、それを公言し、搭載を義務化してもいいのではないかと思います。
最後は、私が考えるETC2.0の普及方法についてです。ここまでETC2.0の搭載を義務化したほうがいいと書いてきましたが、はっきり言って、今の段階でETC2.0の搭載を義務化しようと思ったら相当強力に事業を推し進める必要がでてきます。そこまでの姿勢でこれを進めていく政治家もいないでしょう。
結局普及のためには、利用者にETC2.0を導入するメリットを感じてもらうしかありません。このためには、サービスレベルを向上させる方法と、導入費用や割引料金の設定など金銭面でメリットを感じてもらう2つの方法があります。ただ、サービスレベルの向上を図ることは、それ以上に優れたサービスが民間企業から提供されている現実を考えれば、お金と時間の無駄になる可能性が高いと思います。それよりも、ETCが普及した時と同じように、ETC2.0を対象に、高速道路の利用料金割引をもっともっと拡大していくべきです。これだけでは高速道路を頻繁に利用者する人しか普及しませんので、機器本体の価格についても、現在のETCと同等の価格で購入できるように合わせて補助金も投入する必要があります。
最近の風潮として、道路行政に税金が投入されることは、とかく批判の対象になってしまいます。ETC2.0が本当にこれからの社会にとって必要なサービスだと言うのであれば、必要なものには必要な税金を投入していくという姿勢で本気で取り組んでみてもいいのではないでしょうか。